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副院長 平野景太 先生のIgA腎症に関する多施設共同研究が海外英文誌 JAMA Network Open に掲載されました
2019-06-05
議 論

Association Between Tonsillectomy and Outcomes in Patients With Immunoglobulin A Nephropathy

著 者
Hirano K, Matsuzaki K, Yasuda T, Nishikawa M, Yasuda Y, Koike K, Maruyama S, Yokoo T, Matsuo S, Kawamura T, Suzuki Y
雑 誌
JAMA Netw Open. 2019 2(5):e194772. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2019.4772.
 
33~34万人の透析患者さんがいらっしゃる本邦で、透析に至る患者さんを1人でも多く減らすことは喫緊の課題です。IgA腎症は末期腎不全に至る主な疾患であり、国が定める難病の1つです。日本を含む東アジアは上気道炎時に真っ赤な血尿を認めるIgA腎症の頻度が多く、慢性扁桃炎が併存する場合、昔から扁桃の摘出術が選択される傾向にありました。しかしながら、IgA腎症における扁桃摘出術の有用性に関する臨床研究の多くは単施設・小規模であったことが課題でした。

 筆頭著者の平野景太先生らは厚生労働科学研究費補助金難治性疾患対策事業の難治性腎疾患に関する調査研究「IgA腎症ワーキンググループ」において、全国に及ぶ42の多施設で2002年~2004年に発症したIgA腎症1,065例を対象に扁桃摘出術と良好な腎予後との関連性に関する臨床研究論文を発表しました。年齢や性などの背景因子をマッチングさせた解析において、扁桃摘出術は末期腎不全のリスク比で66%の減少と関連しました。この関係は腎機能が低下した症例、蛋白尿や血尿が高度な症例でも確認されました。

 近年の基礎研究では、扁桃を含む免疫系の糖鎖異常IgA分子がIgA腎症の発症と進展に関わる機序が明らかにされつつあります。将来の臨床研究に向けて、無作為比較試験での検証や扁桃摘出術の有用性が示唆されるターゲットの特定などの課題が残されるものの、今回の筆頭著者らの発表はIgA腎症の遺伝子リスクの高い東アジアにおける今後の実臨床にとって参考になるものと考えられます。
 

Invited Commentary
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2734797

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