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沼澤洋平先生の急性心筋梗塞に対する抗血栓療法についての英文総説論文が海外の英文雑誌Journal of Clinical Medicineに掲載されました
2020-07-08
注目
題名

Antithrombotic Strategy for Patients With Acute Coronary Syndrome: A Perspective From East Asia

著者

Numasawa Y, Sawano M, Fukuoka R, Ejiri K, Kuno T, Shoji S, Kohsaka S

発表
J Clin Med.2020 Jun 23;9(6):E1963.doi:10.3390/5cm9061963
 
今回、筆頭著者の沼澤先生らは急性心筋梗塞を発症した症例に対する適切な抗血栓療法(薬剤の種類や容量などの違い)について、主に日本人を含む東アジア人において欧米人とは異なる特徴があることを数多くの先行研究からデータをまとめ、総説論文として発表しました。
 
一般的に循環器内科の領域には急性心筋梗塞をはじめとした虚血性心疾患、心房細動などの不整脈、肺塞栓症や深部静脈血栓症など、いわゆる血液をサラサラにする薬剤(抗血栓薬)を用いて治療を行う疾患が多く含まれます。これらの抗血栓薬を内服する症例は血栓が形成されにくくなる、あるいは血管がつまりにくくなるなどのメリットがある一方で、出血しやすくなるというデメリットが常につきまとうというジレンマがあります。
 
我々日本人を含む東アジア人はこれらの抗血栓薬を継続的に内服した際に欧米人よりも出血性合併症が起こってしまう可能性が高いことが従来から報告されていました。その一方で薬剤に関する大規模臨床試験は欧米諸国を中心に行われることが多く、日本のガイドラインを作成する際にもこういった欧米の臨床研究データを参考にすることが多いのが実情です。例えば急性心筋梗塞の治療に使用する薬剤については、一部は欧米諸国で用いられている容量よりも少ない量を日本で使用しているものもあれば、欧米と同じ量を使用しているものもあります。
 
今回沼澤先生らの研究グループは特に東アジアの国々で施行された大規模臨床試験の結果を欧米の研究データと比較し、急性心筋梗塞患者の東アジア特有の患者背景(高齢者が多く、欧米人と比較して体型が小さく、出血リスクが高い)をまとめるとともに日本における適切な薬剤の選択についての考察を総説論文として執筆しました。同じ疾患に対する治療であっても、欧米諸国と東アジア諸国における様々な違いを明らかにし、個々の症例に応じて適切な薬剤の種類と容量を選択することは、急性心筋梗塞患者に対する治療結果を改善させることにつながるものと期待されます。(なおこの論文の原稿の一部は、以前足利赤十字病院循環器内科に在籍していた工野俊樹先生が執筆してくださいました。)
 
この論文は2020年6月23日に海外の英文誌であるJournal of Clinical Medicine誌に掲載されました。
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